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好き勝手に生きてみる

祖母から何度か誘われていた史談会の集まりに、ついに参加することになった。
「桜ウォーク」と題されたその催しは、地域の史跡スポットを解説を聞きながら巡るというものらしい。2時間半ほどの工程だ。
全国で一番早く桜の開花速報が出た高知県だが、この日は満開とはいかず、三分咲き程度だった。
私の歴史や史跡についての知識は高校生止まり(とういうかほぼ忘れている)で、正直あまり乗り気ではなかった。祖母も80代になる。祖母と過ごせる時間はあと何回だろうと思うと、足が動いた。恋人も同行する。
定刻通りにコミュニティセンターを出発した。人数は10人強といったところか。
先導してくれる解説の人は「足腰がちゃがまるからあまり歩けないかも」と言いつつ、片杖にズンズン先を歩いていく。あっという間に引き離されてしまった。30代に入ろうとしている私の運動不足よ。

史跡に着くなり、とんでもない知識量の解説が始まる。思わずメモを取らないとと思い、スマホに書き込む。
近代遺跡、戦争遺産——聞き取れた単語だけが、断片的に並んでいく。
ついていけない。私は単語を拾うだけで精一杯だった。
周りの参加者はみな口々に解説について私見を挟み、木の根っこのように話が広がっていく。


話は分からないけれど、なんだか楽しくなる。自分も知りたいと思うようになる。
「これはチャートだね」と、隣のおじいさんが岩を見て言う。
史跡そのものだけでなく、それを取り巻く自然環境や歴史、これからどう扱われていくのかまで、話は止まらない。
「あれは山桜やね、もう咲いちゅうがやね」
「山桜と普通の桜は何が違うが?」
「それは葉っぱと一緒に咲いちゅうのが山桜よ」
前を歩くおばあさんとおじいさんの会話を盗み聞きして、ほうほうと自分で納得する。
突然、「これは何でしょう」とクイズが始まる。

近くの野花を引きちぎり、私に見せてくる。これは知っているぞと内心ニヤニヤしながら「カラスエンドウ」と答える私。それでは何科に属しているかと追い討ちをかけられ、「エンドウというぐらいだから豆科」と答える。当てずっぽうが正解した。
このおじいさんには、多分ウォーキング中に20問くらい出題された気がする。
民家の竹垣を見て、「竹は何科か」と聞かれた。竹はイネ科だそうだ。竹の花を見れば稲穂にそっくりだと言う。スマホで写真を検索すると本当にそのとおりで、私の脳裏に焼きついた。
見て、触れて、匂いを嗅いでみて得た知識は、こうやって残るのかもしれない。
郷土史の先輩であるという方のお墓を訪れた。墓にも種類があり、形を見ただけで何時代に作られたものか分かるそうだ。墓にも流行があると聞いて、昔の人も今の人とあまり変わらないのかも親近感を感じた。



途中立ち寄った神社では、伏せポーズの狛犬に興奮しながら解説する人もいた。

史跡スポットを巡る先々で、膨大な知識が降り注ぐ。スマホから流れてくる情報とは違って、どこか心地の良い脳の疲れを感じる。
厳格にスケジュールどおりということもなく、解説を聞かずに先に進む人、疲れたからと途中で帰る人もいた。
それでも誰も気にしていない。
私たちもこれくらい自由で好奇心の赴くままに生きていいんだなと思える桜ウォークだった。
誘ってもらったお礼にばあちゃんにランチをご馳走して、帰路に着いた。
